名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)30号 判決
論旨は、原審量刑の当否に関するものであるが、その如何を判断するに先立ち、職権を以て、原裁判所の構成に、違法の有無を審案するに、記録によれば原判決は、起訴状掲記の公訴事実と同旨の事実を認定し、該事実に対し職業安定法第六十三条第二号刑法第六十六条第六十八条第三号等を適用し、被告人を懲役六月に処する旨言渡したものであることを認め得べく、然るところ、職業安定法第六十三条の所定刑が、一年以上十年以下の懲役又は二千円以上三万円以下の罰金に係ることは言う迄もなく、従つて所定刑中懲役刑を選択する限り、同条該当の罪は、短期一年以上十年以下の懲役刑を以て問擬せられることとなるから、此の限度に於ては、職業安定法第六十三条の罪は、裁判所法第二十六条第二項第二号に基き、裁判官の合議体を以て、その審判を為すを相当とすると考えられるにも拘らず、これを記録に徴すれば、原判決は、単独の裁判官によつて為され、合議体による審判の手続を経たものでないことを認め得べく、叙上のような見解をとる以上、原判決は、適法に構成された裁判所によつて為されたものでないと言わざるを得ないから、弁護人の論旨に対して判断をする迄もなく、刑事訴訟法第三百九十七条第三百七十七条第一号に則り、原判決を破棄した上、同法第四百条本文に従い、本件を金沢地方裁判所に差戻すべきものとする。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)